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アルミニウムへのめっき加工

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アルミニウムにめっきをすることは可能?

結論から言えば、アルミニウム素材へめっき加工を施すことは可能です。ただしアルミニウムはめっき加工における難素材として知られており、通常のめっき加工をそのまま再現しても金属被膜の定着力が弱まって剥がれやすくなるといったデメリットが生じやすくなります。

アルミニウムへのめっき加工が難しい理由として、アルミニウムと酸素の反応性の良さが知られており、アルミニウムの表面へ先に酸化被膜が形成されてしまい、めっき被膜がアルミニウムそのものへ直接に定着しづらいということがポイントです。

そのためアルミニウムへのめっき加工では、事前に酸化被膜を除去する前処理が必要となります。

アルミニウムにめっきをする理由・メリット

電気抵抗の低減

アルミニウムの表面にめっき加工を行う理由の1つに、電気抵抗を低減させて導電性を向上させるといったものがあります。アルミは軽量で扱いやすいといった物理的なメリットがあり、さらにそこへめっき加工を施して導電性を高めてやれば、軽量かつ電器を通しやすい素材や部品を作るといったことが可能です。

なお、アルミニウムへのめっきでどの程度の導電性を得られるかは、めっき加工で用いる金属成分に依存します。

はんだ付け性の向上

アルミニウムは表面に酸化被膜を形成しやすく、めっき被膜が付着・定着しづらい理由と同じ理屈で、はんだ加工を行ってもはんだが落下しやすいといった問題があります。そのため、あらかじめアルミニウムの表面にめっき加工を行い、はんだ付け性を向上させることで製造ラインでの加工効率や加工品質を向上させるといったことが可能です。

また、アルミニウムは電解腐食を発生しやすく、直接的なはんだ付けでは劣化を促進させることも重要です。

溶接工程の効率化

アルミニウムに抵抗溶接を使って溶接加工を行おうとすると、溶接機の電極に対象のアルミニウムが付着してしまい、電気抵抗が上昇して溶接の強度や品質が低下してしまったり、電極の研磨を頻繁に行ったりとったデメリットが発生します。そのため、アルミニウムの表面にニッケル・錫めっきなどの加工をして、アルミニウムの電極付着を抑えることで溶接効率を向上させることが可能となります。

めっき加工とアルマイトの違い

アルマイトはめっき加工と同様に、アルミニウムの表面に行う加工処理ですが、アルミニウムの表面をカバーする被膜の性質が異なる点が重要です。

めっき加工の場合、めっき液などを活用して、目的の金属成分で被膜を作ってアルミニウムの表面をカバーします。一方、アルマイトでは電気化学的な作用でアルミニウムの表面酸化を加速させ、酸化被膜を分厚くしていくといった技術となります。

アルミニウムへのめっき工程

アルミニウムへのめっき加工では、通常の金属よりも複雑な前処理工程が必要とされます。これはアルミニウムが非常に反応性の高い金属であり、空気中でも容易に酸化被膜を形成してしまうためです。

この酸化被膜が残ったままでは、めっき被膜の密着性が著しく低下してしまうため、めっき前の各工程でしっかりと除去・処理を施す必要があります。

一般的な工程の流れは以下の通りです。

1.研磨

鋳造品やダイカスト製品の場合、製造過程で発生した鋳巣や離型剤、バリなどが表面に残ることがあります。これらの不純物は、めっき品質に悪影響を及ぼすため、まずは機械研磨やバフ処理などで物理的に除去します。

2.脱脂

表面に付着した油分や汚れを除去する工程です。

アルミニウムは酸にもアルカリにも溶けやすい「両性金属」のため、鉄などと異なり強アルカリ性の脱脂剤は使用できません。ケイ酸ナトリウムやリン酸ナトリウムなど、pH10以下の弱アルカリ性の脱脂剤を使用して処理を行います。

ダイカスト品などの複雑形状では、有機溶剤の併用やウォータージェットによる洗浄が有効です。

3.エッチング

アルミニウム表面に自然に形成された酸化皮膜(Al₂O₃)を除去するための工程です。一般には苛性ソーダを用いた強アルカリ性の溶液を使用し、高温環境下で素材表面を溶解・活性化させます。

エッチング中に発生する水素ガスが撹拌作用を持ち、細かな異物の除去にもつながります。ただし処理時間が長すぎると表面が荒れたり、寸法変化を招く可能性もあるため、制御が重要です。

4.スマット除去

エッチングで除去しきれなかった合金成分や不純物(スマット)を取り除く工程です。

スマットとは、銅やケイ素などアルミニウム合金中に含まれる、アルカリでは溶けない成分の微細な残留物のこと。これを除去しないとめっき不良や外観不良につながります。

スマット除去には硝酸やフッ化物を含む酸性溶液が使用され、対象となる不純物に応じて使い分けます。

5.ジンケート処理

酸化皮膜の再形成を防ぐために行うのがジンケート処理です。これはアルミニウムと亜鉛との置換反応により、表面に亜鉛の薄膜を形成する工程で、アルミニウムが再酸化するのを防ぎ、後工程のめっきの密着性を高めます。

より高い密着性が求められる場合には、一度形成した亜鉛被膜を一度剥離し、再度ジンケート処理を行う「ダブルジンケート」が採用されます。この方法は、アルミ表面の電位を均一化し、より安定しためっき下地を作るのに有効です。

6.めっき処理

前処理を終えたアルミニウム素材は、ようやく本来のめっき処理に入ります。目的に応じて無電解ニッケルめっきや銅めっきなどが選ばれますが、密着性と安定性の観点から無電解ニッケルが使用されるケースが多く見られます。

アルミニウムへのめっきの種類

アルミニウム素材に施されるめっきにはさまざまな種類があります。ここでは、代表的なめっき金属について、その特徴や使用目的を紹介します。

ニッケルめっき

ニッケルは耐食性と硬度に優れており、工業用途で最も広く使用されているめっき金属の一つです。アルミニウムに対しては、下地として銅ストライクめっきを施した後にニッケルめっきを行う方法と、直接ニッケルを析出させる「亜鉛置換ニッケルめっき」の2つの方法があります。

特に複雑な形状の製品や、均一な膜厚が求められる場合には、電流を使用しない「無電解ニッケルめっき」が有効です。これにより、表面硬度・耐摩耗性・耐食性が大きく向上します。

錫(スズ)めっき

錫は電気伝導性に優れ、融点が低いという特性から、電装部品や電子機器の端子などに広く用いられています。

通常はニッケルめっきの上に重ねて施されますが、ジンケート工程において亜鉛の代わりにスズを使用する「スズ置換めっき」という手法も存在します。

銅めっき

銅は非常に高い導電性を持ち、電気・電子部品向けに多く採用されています。アルミニウムへの銅めっきは、薄い下地となる「ストライクめっき」を施してから行われます。

金めっき

金は非常に高い耐食性と導電性を持つことから、エレクトロニクス分野では重要なめっき材料です。接点部品や高信頼性が要求される端子に多く使用され、コストは高いものの、長寿命かつ高性能が求められる場面で活躍します。

銀めっき

銀はすべての金属の中で最も高い電気伝導性を持ち、電子部品や接点部品などに用いられます。

金めっきと同様に、耐食性と導電性の高さが評価されており、コネクタなど信頼性が重視される部品の素材として選ばれることがあります。

真鍮めっき

真鍮は銅と亜鉛の合金で、装飾性に優れていることから、外観を重視する製品で採用されます。通常はニッケルめっきの上に電気めっきで真鍮を重ねる方法が取られます。

クロムめっき

クロムめっきは大きく「装飾クロム」と「硬質クロム」に分けられます。装飾クロムは、銅・ニッケルを下地とした三層構造で、美観と耐食性を重視する製品に用いられます。

一方、硬質クロムは高い硬度と耐摩耗性を備え、工業用途や摺動部品などに使用されます。